ベータ・バンドのサード・アルバム『Heroes To Zeros』のジャケットに描かれているのは、派手なコスチュームを着て、マンガのスーパーヒーローのような格好をしたバンド・メンバーたち。悪の勢力に鉄槌(てっつい)を下そうと、今にも絵の中から飛び出してきそうだ。しかし、この実験好きなスコットランド人ロッカーたちのキャリアを知る者なら承知だろうが、彼らは強大化しつつある内なる創造神との格闘で手一杯。世界を救うなどという退屈な仕事にかまけているヒマはなさそうだ。
一聴して耳に残るのは「Assessment」だ。高鳴るギター、うなりを上げるブラスに乗って、メイソンが悲しげに詠唱する――「俺の役立たずの頭を切ってやった / 横になったら首から上がなくなった(I think I cut my skull on the way down / I think I lost my head when I lay down)」。だが、その他の曲でも彼ら独特の風変わりなスタイルは全開だ。ためしに、伸びやかで宇宙的なラヴ・ソング「Wonderful」を聴いてみてほしい。ハウス・オブ・ラヴの生気あふれるギター、ヒップ・ホップのリズム、ハチドリの羽のようにビートを繰り出すエレクトリック・キックドラムが混然一体となった「Liquid Bird」もおすすめ。