基本情報|Release Information
■ レーベル:Liberty
■ 品番:LLP-80700
■ フォーマット:LP, Stereo, Gatefold
■ 国:Japan
■ リリース年:1972年
■ タグ:Space Rock, Psychedelic Rock, Japanese Pressing, Rock Now, Conceptual Art
作品の解読|Decoding the Work
1972年――スウィンドン郊外のローディング・ベイから、労働者の息遣いと蒸気のようなアンプノイズを背負って、Hawkwindはふたたび音を鳴らし始めた。『Doremi Fasol Latido』は、すでに幻想でも理想でもなくなった“カウンターカルチャーの残響”が、音楽ではなく装置として存続することを選んだ、その具体的証明である。
この時期、バンドは道路上に生きる共同体=モーターヘッド(後のバンド名として再帰)として機能していた。ロンドン郊外から改造バスで各地を巡る「Hawkwind Caravan」は、移動・演奏・生活が不可分となった物理的ユートピアの限界実験であり、レコード制作もその延長線上にあった。
ここで初参加となるのがレミー・キルミスターである。かつてサイケデリック・フォークの回路にいた彼は、ベースというより「加速ペダル」としてバンドに機能した。とくに「Brainstorm」や「Lord of Light」で示される単音の強打は、グルーヴというより時間軸の撓みを誘発する物理的出来事だ。ニック・ターナーのサックスやフルートがそれに絡み、旋律は音ではなく気流へと変わる。Del DettmarとDik Mikの電子音は、演奏ではなく干渉=Interferenceを生成する“非演奏者たち”のアクションだった。
このサウンドの形容は容易ではない。サイケデリックでも、プログレッシブでも、ハードロックでもない。むしろこれは即興による物理環境操作であり、会場の湿度・電圧・聴衆の移動を反映しながら展開される「出来事」としての音響だった。
そして、そこに刻まれていたのは、音ではなく空気の履歴だった。真空管の温まりとともに始まる振動は、コードや旋律としてではなく、場所のざわめきと耳の距離感の記憶として拡がる。Del Dettmarのシンセは、和音を奏でることを拒みながら、むしろ空間の特性を擦り出す。金属の表面が冷える速度、壁に貼られたフライヤーの波打ち方、汗と埃が混じるその匂いさえも、音のなかに閉じ込められていた。
それは、観念的なスペース・ロックではなかった。スペースという言葉が意味するのは、宇宙ではなく「空白」だった。都市の裂け目にうまれた空白、制度と制度のあいだにある未分類の時間、ロックが資本へと包摂されてゆく裂け目でHawkwindは演奏していた。『Doremi Fasol Latido』は、録音物として聴かれるよりも、かつて鳴った音の亡霊が封じられた儀式の残滓として感じられるべきものなのかもしれない。
こうしてこのアルバムは、文化的にはカタログ化されない記憶の媒体であり、電圧と共振したかつての身体と空間の記録であり、歴史の片隅で、ジャンルと制度のどちらにも定着しきれなかった**「演奏の痕跡」そのもの**として残されている。Hawkwindが残したのは曲ではなく、音の周囲にあった気配そのものだった。
状態詳細|Condition Overview
メディア:VG+(軽度のノイズあるが良好な再生状態)
スリーブ:VG(開口部天辺に約10cmの裂け/全体にスレ・角打ちあり)
付属品:インサート
支払と配送|Payment & Shipping
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。