長岡京室内アンサンブルの第2弾の曲目は、齋藤秀雄ゆかりのチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」と、モーツァルトの「3つのディヴェルティメント」。
「斎藤先生との約束ことを忘れたことは1日もありません」という森悠子の深い思いが、このアルバムには凝縮されています。
2つのエクストラ・トラック(I)マーラーの「アダージェット」(CDのみ)と(II)新考案「SACD 5.1サラウンド・バランス・テスト」もついた超豪華盤です。
2002年は、日本のクラシック音楽の基礎を築いた、齋藤秀雄(1902.5.23~1974.9.18)の生誕100年の記念の年に当たります。
森悠子の教育者としての才能をいち早く見抜いていた齋藤秀雄は、彼女に後進の指導を託すことを約束していました。1974年9月、パリにいた森悠子に「すべてを整えるから、すぐにも日本に戻ってきて欲しい」との電話が病院からありました。しかし、チェコからフランスへ留学し、ちょうどパイヤール室内管弦楽団に入団したばかりの森悠子は、あまりにも学ぶことの多さに「40歳になるまで待って下さい」と恩師に返事をしました。それが師との最期の会話で、一週間後の9月16日に恩師はあの世へと旅立ちました。
森悠子は、常に音楽現場の最前線にあって、ルネッサンス、バロック、古典から現代音楽、オペラにいたるあらゆる時代の音楽と演奏様式(スタイル)を貪欲に学びとってきました。その背景には恩師とのこうした約束があったのです。
その約束を果たしたのが、1990年の京都フランス音楽アカデミーの設立であり、1997年には、世界各地のマスター・クラスなどでの教え子を中心として創立した長岡京室内アンサンブルなのです。
齋藤秀雄はアンサンブルを通して、指揮者、弦楽器奏者を中心に、世界に通用する数多くの演奏家を徹底的に鍛え上げました。齋藤秀雄の教えを実践し、次世代演奏家に継承することも目的のひとつに掲げたサイトウ・キネン・オーケストラは、一定の成果を上げていると言えます。
しかし齋藤秀雄は、その先のはるかなる日本の音楽の未来をみつめていました。
森悠子に「これからの日本の音楽は変わるよ」と語っていました。このアルバムに収録されたチャイコフスキーの「弦楽のためのレナーデ」と、モーツァルトの「3つのディベルティメント」(特にK.136)は、音楽のあらゆる要素が含まれているとして、齋藤秀雄が音楽教育の現場で何度も何度も繰り返して演奏した、いわば齋藤秀雄のテーマ曲ともいえるものです。
森悠子は齋藤秀雄から出発し、ヨーロッパでの様々な音楽現場で体験を積み重ね、独自のアンサンブル法と音楽理念を確立しました。
齋藤秀雄がみつめた未来が、このアルバムには込められているのではと思います。