
日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因 (光文社新書 1067) 山田昌弘/著
「1・57ショック」(1990年)から30年もの間、出生率が低迷している日本。
当然の結果として、21世紀に入り人口減少が始まっている。
欧米人からは「なぜ日本は少子化対策をしてこなかったのか」と驚かれる。
一方、アジアの国々の人からは「日本のようにならないためにはどうすればよいか」と聞かれる。
日本を反面教師としようとしているのである。
家族社会学者である著者は、日本の少子化対策が事実上失敗に終わっているのは、
未婚者の心と現実に寄り添った調査、分析、政策提言ができていなかったからだと考える。
具体的には、欧米に固有の慣習や価値意識をモデルの前提にし、
日本人に特徴的な傾向・意識、そして経済状況の変化を考慮しなかったのである。
本書では失敗の原因を分析・総括するとともに、
日本特有の状況に沿った対策は可能なのかをさぐる。
【目次】
はじめに――「子どもにつらい思いをさせたくない」日本人
第1章 日本の少子化対策の失敗
(1)世界で「反面教師化」する日本の少子化対策
(2)日本の「少子化対策失敗」の経緯
第2章 日本の「少子化対策失敗」の理由
(1)日本の出生率を動かす人々は、誰なのか?
(2)少子化の直接の原因に関する「誤解と過ち」
第3章 少子化対策における「欧米中心主義的発想」の陥穽
(1)欧米中心主義的発想とは
(2)欧米諸国の少子化の特徴
(3)欧米モデル適用の陥穽――欧米にあって日本にないもの
第4章 「リスク回避」と「世間体重視」の日本社会
――日本人特有の価値意識をさぐる
(1)「生涯にわたる生活設計」+「リスク回避意識」
(2)世間体意識――「人からのマイナス評価を避けようとする」意識
(3)強い子育てプレッシャー――子どもにつらい思いをさせたくない
第5章 日本で、有効な少子化対策はできるのか
(1)日本の少子化の根底にあるもの
(2)日本の少子化進展の見取り図
(3)有効な少子化対策とは?
あとがき
【著者プロフィール】
山田昌弘(やまだまさひろ)
1957年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。
主な著書に『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(以上、新曜社)、
『結婚の社会学』(丸善ライブラリー)、『パラサイト・シングルの時代』『パラサイト社会のゆくえ』(以上、ちくま新書)、
『希望格差社会』(ちくま文庫)、『家族というリスク』(勁草書房)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』『新平等社会』(文春文庫)、
『少子社会日本』(岩波新書)、『底辺への競争』『結婚不要社会』(以上、朝日新書)、『家族難民』(朝日文庫)など多数。
失われた30年。もう、戻ってこない――
「子どもにつらい思いをさせたくない」日本人「/反面教師」となる日本の少子化対策――脳天気な国、
日本?/ 「1・57ショック」以降の10年の致命的な遅れ/政策担当者は「誰の声」を聞いてきたのか?
/「山田君が言ったことを言ったら、首が飛んでしまう」/軽視される「若い男性」の意識/日本女性
の仕事への意欲は弱まっている/仕事より、「豊かな消費生活、子どもによい学校」が評価される/恋
愛は面倒、恋愛はリスク、恋愛はコスパが悪い/なぜ子どもを持つのか――子どもが「生産財」「役に
立つ存在」だったころ/交際する前に、子育てから老後までを見据える日本女性/子どもを持つ意味の
変化――「消費財としての子ども」の誕生/子どもは、欧米では「使用価値」、日本では「市場価値」
/「世間体を保つ」ことが重要視される日本社会――下にみられたくない/生活水準に関する世間体意
識――日本人は、じつはかなり貧しい/虐待の増加と、子育てプレッシャー/少子化対策は行なうべき
なのか/望ましくないシナリオ…etc.