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秩序と混沌　湯川秀樹論　孤絶の天才の根源的世界像をめぐって
高内壮介　1979年増補改訂版工作舎

◆ 商品説明

秩序と混沌　湯川秀樹論　孤絶の天才の根源的世界像をめぐって
高内壮介　1979年増補改訂版工作舎　
Order and Chaos - On Hideki Yukawa -
The World of Chaos of a Solitary Genius - Sosuke TAKAUCHI

わが本質を見抜いた評論 = 湯川秀樹
書の著者である高内壮介氏は、私にとってまったく未知の人であった。ところが本文のゲラ刷を一読して、高内氏の方は意外によく私の心の内面まで見透しておられるのに驚いた。高内氏は、もともと詩人であって、物理学者ではない。物理学的諸概念の数学的表現を熟知しておられるわけではないと思う。しかし、それ故にこそ、私の精神活動の情念的側面により強い照明があてられることになったのだろう。ふりかえってみると、1934年の秋に核力の理論の帰路としての中間子の存在に思い到った当時、私の心は不思議なほど自信に満ちていた。中間子存在の実験的な証拠は全然なかったにもかかわらず、自分の思いついたことは本質的に正しいと信じていたので、そこに不安はなかった。ところが宇宙線の中の中間子の性質が、より詳しくわかってくるにつれて、私の心は動揺し、不安になりはじめた。　序文―湯川秀樹「私の歩んできた道」より

1 混沌の空野に火をともす旅人　2 旅人の道　3 中間子論の意味するもの
4 進退史観　5 中間子論時代の科学思想
6 非局所場理論時代の科学思想　7 素領域理論時代の科学思想
8 同定的自覚と三段階論　9 生命
・増補日本文化学序説 [隠れた自然との対話]
・付録湯川秀樹小アルバム　・[1907→1978] 編年譜
・素粒子的世界像ダイジェスト

衝撃をもってイメージとなすという湯川物理学の底流にある自然観は、無媒介な自然への愛というより、人間をつっぱなす他者への怖れであり、畏敬であり、人間の無智を知らしめる絶対の距離であった。この他者に同ずることによってえられたイメージを否定するイメージこそ、モデルを構成するものである。それは、〈もの〉に同ずるが故に主観性を没したイメージであり、しかも、ものから逃避するふやけた心境でなく、ものにくいこんでいるが故に、それは、突如として、エロースとか情念にかわるのである。しかるが故に主観性を超越した情念としかいいようのないものである。想像や洞察にはいまだ主観性がつきまとう。主観性がつきまとっている間は同定とはいえまい。〈もの〉に同ずるとはいえまい。それ故にこそ想像や洞察という言葉をつかうかわりに、これを情念というのである。かくして、湯川的同定の主体は無よりも、模写よりも、情念である。湯川同定理論のゆくさきは生命の論理に近づく。●[湯川秀樹論] 八章より

※1997年朝日新聞の湯川秀樹についての記事があります。

※表紙に経年によるスレ、汚れ、キズなどがあります。
※小口にヤケ、汚れがありますが、中ページは比較的綺麗な状態です。
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