
みてのとおりダイナコmarkⅢに使われたトランスをそのまま使用しています。アルミ板を折り曲げ加工してケースから作りました。なかなか納得の行くアンプができたと思います。 ダイナコの出力トランスが好きで、もう5台程度アンプに使用しました。エネルギッシュで安定してきれいな音がします。 参考のためにダイナコのお話をしておきます。
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【ダイナコストーリー】 出会いと離別: 1950年頃、デビッド・ハフラー氏は幼馴染のケローズ氏とアクロサウンド社を立ち上げました。 TO-300などのUL仕様のトランスたちは、世界で一番美しい音がすると称賛されました。
やがてハフラー氏は安くて性能のいいアンプを世の中に供給する必要性を感じ始めました。 トランスだけでよいと考えたケローズ氏とは意見が分かれてしまい、結局ハフラー氏はアクロサウンドを去りました。
ダイナコ社を立ち上げた、ハフラー氏はトランスの設計図を書き、近くにあったトランスメーカーのトレスコ社に試作を依頼したところよいものが出来たので、以降トランスの製造はトレスコ社に委託しました。このくだりは1999年のデビッド・ハフラー・インタビューと言う記事に詳細が確認できます。
【キットのスタートと虚偽の流布】
多く製造されたダイナコmarkⅢはキットでした。1975年頃、日本国内にあった「ハーマン・インターナショナル」の日本支社がmarkⅢの輸入と販売を開始することになりました。
この時に日本支社のスタッフが早とちりをして、ダイナコならアクロサウンドのトランスだろうと考え、markⅢのパンフレット説明文にそのまま「アクロサウンド社開発の高信頼性の出力トランスを搭載し:写真10参照」と記載してしまい、これにより多くの日本のマニアはダイナコのトランスはアクロサウンド製だと思いこんでしまいました。パテントの問題や半ば喧嘩別れしたわけですから、以降アクロサウンド製を使うことは一切なかったと思います。ハーマン・インターナショナルのスタッフで、しかも日本人なので、詳しいことは知らなかったのでしょう。
ハフラー氏のインタビューでも、トランスの委託先は一部のチョークコイルは海外製を使ったが、それ以外に新たな委託先は使わなかったと答えています。
【日本への輸入】
さて輸入の時は、キットは完成品されて入ってきました。おそらく職人ではない一般人が組立てたのか、トランスのネジは緩んでいたりやや不具合のあるものも散見されたようです。
当時ハフラー氏は日本へ輸出することを前提に、100V仕様の電源トランスを製造したようです。一次側リード線の片方が白で、もう一方が黒地に白のストライプまたは白地に黒のストライプのものは100V仕様のようです。
但し、両方のリード線が黒のものは117V仕様なので、国内で使用するには昇圧トランスが必要になります。
問題点を明確にします。117V仕様のものを100Vで動作させると、電源トランスの二次側の電圧はそのまま0.85倍の値まで低下します。出力管6550Aのヒーター電圧は規制がかかっており、「定格6.3Vに対しては5.7Vから6.9Vの範囲使うこと」と定められています。しかし100V使いならヒーター電圧は5.38Vに低下してしまいます。
整流管の5AR4もヒーター電圧は4.5Vから5.5Vの範囲で使用するように規格書に定められていますが、4.25Vまで低下します。
米国管球メーカーのエイマック社が、トリウムタングステンのフィラメントの動作電圧と球の寿命に関して実験データを公開しています。規程電圧でフィラメントを動作させた場合と、0.85倍まで下げた電圧で操作させた場合の寿命は、低下電圧での動作を続けると正規の電圧動作の場合の4分の一の寿命になってしまうとの結果でした。
但し注意書きがあり、(これはトリウムタングステンの場合であり、酸化バリウムをコーティングした傍熱管には適用されない)とありました。
しかしながらコーティングの下にあるタングステンは同じ材料なので、全く影響がないとは言えないと思います。
真空管規格書で定める規定値以外での使用状態になっているのは、問題が多いと思います。 なので117V仕様のものをお使いの方は、115Vへ昇圧して使用した方がよいと判断します。
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今回製作したアンプはmarkⅢとは違う回路にしました。以降の相違点を参照ください。
1.前段を5極/3極複合管1本で構成したアルテック型から、安定性と特性に優れるリーク・ムラード型に変更
2.出力管のバイアス回路を固定バイスから、出力管1本ごとのセルフバイアスに変更。これによりメンテナンスが容易になりました。シャーシ背面のバイアス監視端子で容易にバイアス電流が確認可能です。
3.電解コンデンサを出力管から離して、熱衝撃を緩和させた。
【仕様】
・定格出力:40W(3%歪、1KHz )
・歪率:20Wまで歪率0.35%以下
・使用パーツ:電源トランス(ダイナコP782 /100V 仕様)、出力トランス(ダイナコA431)、チョークコイル(ダイナコ200mA)、真空管(GE社6550A、松下5AR4、東芝6CG7、テスラEF86)
・外形:300×200×200(高さ)
・重量:13KG (1台)
トランス以外の部分は殆ど新品です。パーツも米国製のものなど、適宜選定して使用しています。出力管は最終的に6550Aを挿しています。
安定した余裕のある音がします。例として通常は「バスドラの音は迫力がある」と表現されることがありますが、このアンプは「バスドラが大太鼓のようになり、皮の表面の振動まで詳細に聴こえる」といった印象になります。 音楽のソースを選ばないと思います。
半導体のハイエンドアンプを使用されていて、納得の行く音がなかなか得られていないかた、真空管アンプの音に興味があり、そろそろ適当なアンプを使ってみたい、などのご希望があるかたは、ご検討をされてはいかがでしょうか。
片方のアンプは、ダイナコのトランスに見受けられるように、わずかに唸りますが気にならない程度です。
素人作業になりますので、塗装のムラ、剥がれ等があります。
尚、このアンプは以降も当方で継続してメンテナンス対応をいたします。
発送は土曜、日曜日になります。ご了承をお願いいたします。
(2026年 2月 2日 20時 56分 追加)この規模のアンプをガレージメーカーが販売すれば、100万円を切ることはまずないと思います。
以降のメンテナンスも致します。とても安価な買い物だと思います。
(2026年 2月 4日 23時 14分 追加)自作した経歴をブログで公開しています。ご興味があればアクセスしてみてください。
「ダイナコ的アンプの製作」のシリーズです。
https://ameblo.jp/zxcv-1026/entry-12955352870.html